
読了:約8分(5162字)
公開:2015-12/24
更新:2016-03/16「4. 速聴からナチュラルスピードへ」に加筆
Image by 機動戦士ガンダム - 第42話 宇宙要塞ア・バオア・クー(Amazon)
英語上級者さんたちのニュータイプ値にはほど遠いレベルですが、そこそこ英語が聞き取れるようになってきつつあり、速聴の効果についても、ようやく人様にきちんと説明できるくらいに分かってきたので、まとめてみることにしました。
1. 速聴の2大効果
【効果1】文頭から瞬時に、一発で聞き取れるようになる
長文が聞き取れない原因
長いセンテンスや、TOEICのPart 3・4のような長文が聞き取れないのは、音声を理解する自分の脳の処理速度が、聞こえてくる音声よりも遅いのが原因なんですよね。PCで「フリーズ」ってありますよね?固まってしまって動かなくなる、仕事中に起きるとイライラするのあの現象です。
あれって、PCの処理が間に合ってないのが原因なんです。命令された量が多すぎて処理が追いついていない。
聞き取れない英語音声がたまってくると、脳の中ではこれと同じようなことが起きてるわけです。
耳から入ってきた音声の解析(理解)が終わらないうちに、次々と新しい音声が聞こえてきて、脳の処理が追いつかず、フリーズしているんです。
リスニング音声の処理速度を高めてくれる「速聴」
単純に考えると、処理速度を速くすることができれば、聞こえてきた音声を、フリーズせずに瞬時に解析して理解することができるようになるわけです。この処理速度を高める方法の1つが、「速聴」なんだなと。
例えば、ひたすら練習してきて、すでに聞き取れるようになった音声を、1.5倍速で毎日聴くようにしていると、リスニング音声を理解する処理速度が速くなるんです。
『公式問題集』だと、一番ゆっくり話すナレーターで150 wpm、ゴルゴ31に暗殺を頼みたくなるくらい早口で聞き取りにくい例のオーストラリア人は200 wpmくらいで話します。
※wpm:words per minute
ですが、1.5倍速にすると、それぞれ
になるんですよね。1.5倍速にすると、一番遅いナレーターでも、オーストラリア人のオリジナルスピードよりも速くなるわけです。
今年の夏頃まで毎日1.5倍速で聞いていたのですが、オリジナルの速度がかなりゆっくり、クリアに聞こえるようになりました。
イメージとしては次のような感じ。
なつかしー。
TOEIC満点ホルダーのAkiさんも、2倍速で聴いておられます。
初めて2倍速機能を使ったのは、本番でゆっくり聴こえる安心感のため。いまは初見でも全て聴きとる高地トレーニングのため。同じ機能でも使い方は習熟度によって変わってきた。TOEICと同じ三代目のウォークマン。いつも大活躍してくれてありがとうpic.twitter.com/V9Ph4uyqmv
— Aki (@mikorino) 2017年5月19日
【効果2】復習効率が1.5倍になる
TOEIC講師・HUMMER先生は今でも毎日、1.5~2倍速でTOEICの模試を解いておられるそうです。理由をお聞きしたら、時間の節約だそうです。
TOEICのリスニングパートは約45分ありますが、「Online MP3 Cutter」などで、「Direction」「無音部分」「Part 3の設問読み上げ」などの不要部分をカットして、1.5倍速で再生すると、1テスト当たり18分くらいで復習できることになります。
最近、過去にトレーニングした音声を聞き返すことの重要性を感じているのですが、できればあんまり時間をかけたくないんですよ。復習って、新発見が少ないので苦痛なんです(笑)
ですが速聴なら、3分の2~半分くらいに短縮できるので、効率的に復習できることになります。
最近よくブログを拝見させていただいてる、TOEICリスニング満点・英検1級ホルダーのyukoさんは、ブログ記事「リスニング4000時間雑感:映画を字幕なしで」によりますと、「字幕なしで観ることのできる映画がかなり増えてきた」そうです(2014年)
そのyukoさんですが、リスニング学習を本格的に始めた頃、精読した後に、1ヶ月毎日「音声と文字が一致するまで聞き込んだ」そうです。詳しくは次の記事で読めます。
【参考】リスニング基礎体力作りのために|100 Wish List
僕はこの毎日聴くトレーニングを、最初はオリジナルスピードで、日が経つに連れて慣れてきたら、徐々に1.2倍速、1.3倍速と速聴するようにしています。こうすると、処理速度が速くなる&時間を短縮できるようになるなと。
2. 速聴に必要なもの

速聴する方法は3通りあります。
(1) スマホの無料アプリ「語学プレーヤー(iPhone・Android)」
(2) Windows Media Playerの「再生速度変更機能」
(3)「SONYのMP3ウォークマン」の再生速度変更機能
スマホをお持ちの方は、無料のアプリ「語学プレーヤー(iPhone・Android)」で充分だと思います。
家で勉強することが長い方は、Windows Media Playerの「再生速度変更機能」が便利。もちろん無料。ただ、うちのPC、速度変更にするとたまに変な音声になります…
僕はスマホの電池は長持ちさせたい&スマホの記憶領域を圧迫したくない人なので、出先で英語を勉強するときは「MP3ウォークマン」を使っています。
今年新たに購入した「NW-S15」に付いている「ダンスモードの再生スピードコントロール機能」を使うと、0.1倍速単位で遅くしたり、速くしたりできて重宝しています。
3. 速聴 3つの注意点
速聴は、注意が必要なトレーニング方法です。ただ何となく、1.5倍速で聴いても効果はほとんどありません。
そんなわけで、速聴の注意点をまとめてみました。
【注意1】初心者はむしろスロースピードから
英語初心者やリスニングが苦手な方がいきなり速聴をやるのは、野球初心者がバッティングセンターで、いきなり150km/hのストレート(YouTube)を打ち始めるようなもんです。TOEIC リスニング400点未満の方は、スロースピード(0.7~0.9倍速くらい)から始めたほうがいいです。
僕のレベルだと、200wpmを超えるナレーターさんはけっこう厳しくて、聞き取れない箇所があったら、0.7倍速で聴き始めるときもあります。成長するためなら、恥も外聞もないです。
そして、スラスラ言えるようになってきたら、速度を上げていく感じです。
自分の感覚では、10日間毎日練習したら、確実にその速度でスラスラ言えるようになってくるので、そこから、0.1~0.2倍速ずつ上げていくといいと思います。
【参考】シャドウイングとオーバーラッピングの違い、効果的な学習方法と注意点
【注意2】トレーニングしまくった音声を使う
僕が最初に速聴したのは、2011年頃です。ですが当時は、まだ聞き取れるようになっていない音声で速聴していました。効果はゼロ。
結局、オリジナルスピードですら聞き取れない音声を、何百回と速聴で聴いたところで、聞き取れるようにはならないんですよね。
すでに、オリジナルスピードで聞いて理解できる(状況をイメージできる)音声で速聴して初めて効果があるんです。当時の僕は、このことに気づいてなかったなと。
速聴は「まったく聞き取れない音声を聞き取れるようにするためのトレーニング」というよりは、「すでに聞き取れる音声を、より速く処理(理解)できるようにするためのトレーニング」と言えます。
トレーニングについては、次の記事をお読み下さい。
【参考】TOEIC スコアもリスニング力も向上する勉強法 Part 3・4編
875点(L450点)を取得された、まめだいふくさんも、Part 3・4の【 暗唱 】をやり終えた後に速聴をされたそうです。
速聴はよーーーーーーく復習した材料で行うということ。できれば暗唱したものが理想です。ただ単に速聴だけでは、時間の無駄になってしまうと思われます。
【注意3】少なくとも毎日15分は速聴に充てる
10月に英検の勉強にスイッチしてから、なぜか速聴を止めてしまっていたのですが、どうもその影響で速い英語を聞き取る力が下がってきたので再開しました。今の僕は、すでにトレーニングしまくった『公式問題集や信頼できる模試』『英検の過去問集』のテスト1回分を、15分速聴してから、リスニング系のトレーニングに入っています。ウォーミングアップみたいな感じです。
逆に、速聴する時間が多ければ多いほどいいのかというと、一概にも言えないです。
上述したように、聞き取れない音声を速聴しても効果はゼロです。なので、リスニング上級者でない限りは、聞き取れない音声を聞き取れるようにするためのトレーニング【 オーバーラッピング&シャドウイング 】【 瞬間英作文 】【 暗唱 】の時間も必要ということになります。
4. 速聴からナチュラルスピードへ
お時間のある方は、次の日本在住のカナダ人YouTuberのSharlaさんとアメリカ人のRachelさんの動画を見て下さい。13分あるので、最初の数分だけでもOKです。
いかがでしたか? もし普段TOEICや英会話テキストの音声しか聞いていない場合、かなり高速に聞こえるのではないかと。これがネイティブのナチュラルスピードなんですよね。
富士山ではなく、エベレストをめざす
ある程度勉強されている方はもうお気づきだと思いますが、TOEICや英会話テキストの音声でずっと速聴していても、ネイティブのナチュラルスピードの会話は100%聞き取れるようにはならないです。確かに、速聴することで処理速度は速くなるので、洋画で聞き取れる割合も少しずつ増えてきます。
ですが、TOEICや英会話テキストの音声は、丁寧でクリアな発音で録音されてますよね。発音も明瞭で、音の連結・消失も少ないのですごく聞き取りやすいんです。
なので、どこかのフェイズで、ネイティブのナチュラルスピードの英語を聴いていくトレーニングをしないと、あこがれの「洋画を字幕なしで理解できる」は実現できないんですよね。
富士山を登っている限り、エベレスト登頂は不可能だなと。
ナチュラルスピードでの練習を始める時期
ナチュラルスピードでのトレーニングを開始する時期としては、TOEICリスニング400点を超えてからがいいんじゃないかと感じています。今の僕がこのレベルでして、正直に言うと、上述したyukoさんのように「映画の全編を字幕なしで理解できる」にはほど遠いレベルです(^_^ゞ
ですが、TOEICリスニング400点台に入ってくると、初心者の頃とは違って、
ので、映画・海外ドラマによっては聞き取れる箇所もそこそこあるんですよね。
なので、リスニング400点台に入ったら、ナチュラルスピードの素材でのトレーニングを、速聴などと並行して始めてみてはいかがでしょうか?
5. ナチュラルスピードに慣れるためのトレーニング
スピーチ動画・CD
僕は手始めに「スティーブ・ジョブズのスピーチ(YouTube)」を100日間毎日聴きました。最初は丁寧にじっくりと【 ディクテーション 】した後、0.7倍速での【 オーバーラッピング 】から始めました。
TOEIC満点・英検1級ホルダーの英語好きさんのブログ記事「英語リスニング難易度比較表」を拝見した上で、あらためてスピーチを聴くと、確かにスピーチの英語は、映画・ドラマよりは若干ゆっくりで、発音の仕方もクリアで聞き取りやすいなと。
「TED」の多くのスピーカーも、映画・ドラマに比べたら聞き取りやすい部類に入ると思います。スピーカーにもよりますけど(^_^ゞ
そんなわけで、いきなり映画・ドラマに入るよりは、先に少し敷居の低いスピーチから入ったほうが挫折しにくいのではないかと感じています。
森田勝之本

次に、森田勝之さんの本でのトレーニングも開始しました。映画・ドラマの崩れた発音、音の連結・消失のルールを学べるのでとても勉強になります。
こちらも、【 ディクテーション 】した上で、0.7倍速【 オーバーラッピング&シャドウイング 】からスタートしています。
【参考】「映画・海外ドラマを字幕なしで」への第一歩に最適な本
外国人YouTuberの動画
また、お昼ご飯や休憩中に、先ほどのYouTuberさんたちのチャンネル「Sharla in Japan」「Rachel & Jun」を観ています。口の動きが見えるので、発音矯正にもなりますよ。詳しくは次の記事で(・∀・)b【参考】ネイティブの速い英語に慣れる!おすすめYouTuberまとめ
これらのトレーニングを1日30~45分、3ヶ月くらい続けてきた結果、「映画・ドラマが完璧に聞き取れるようになった」ということは、さすがにないですが(笑)、
という効果を感じています。その結果、3ヶ月前と比べてリスニング力が上がったかなと。
結局、ネイティブのナチュラルスピードも「慣れ」なんだなと確信しました。僕と同じくらいのレベル(TOEICリスニング400点台)におられる方は、ぜひトライしてみて下さい。毎日30分、3ヶ月続ければ、何かしらの進化を感じられるはずですよ(・∀・)b
速聴については以上になります!勝利の栄光を君に!(`・ω・´)ゞ
