脳科学者「思い出す&使うことで記憶は強化されるんやで」検索練習

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対象:単語を覚えるのが苦手/勉強しているけど上達しない/英会話でスピーキングが伸びない/リスニングが苦手 
読了:約11分(6455字) 
公開:2020-10/22 
更新:2021-01/29 全体的に加筆・修正
関連:検索練習 - 暗唱 / 分散学習 / 反復練習

検索練習(テスト効果)の力

検索練習とは?

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「検索練習(テスト効果)」のテストというのは、学校の中間テスト・期末テスト、TOEICテストなどのテストではないです。

中間テストや期末テストって、テストが終わった後振り返ったりするような人はレアポケモンだと思うんですよ。また、英検と違って、TOEICは問題冊子を返却しないといけないので、復習できないのが難点です。2ちゃんねるとか見ない限……おっと誰か来たようだ。

これだとテスト効果は見込めません。

テストで間違えたところを何度も復習し、繰り返し練習するからこそ身につくわけですから。

最近ハマっている、第二言語語彙習得を研究しておられる応用言語学者・中田達也教授の著書より。


英単語とその意味を単に眺めるよりも、英単語から意味を思い出すなど、テストの要素を加えると記憶への定着度が高まる。この現象を「テスト効果」という。(P. 39)

「テスト効果」は単語学習だけでなく、読解など様々な学習活動にあてはまる。(P. 39)

……英語でも test(テスト)という言葉にはネガティヴな印象があるため、test ではなく retrieval(検索)あるいは retrieval practice(検索練習)という用語を好んで使う研究者もいます。

……retrieve には「取り戻す」「(情報などを)引き出す」という意味があります。記憶をテストするということは、記憶の中から必要な情報を探し出す(検索する)ことなので、テストのことを retrieval(検索)というわけです。(P. 38)


英単語学習の科学
中田 達也
研究社
2019-04/09

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小学校の頃に、九九を覚えさせられましたよね?

全部の段を思い出してスラスラとノーミスで言えるようになるまで、先生の前で何度もテストさせられたなぁ。あれも検索練習(テスト効果)と言えます。


テスト(暗唱、自己テスト、事前テストなどという意味でのテスト)の実施は、単に知識を測る以上のことを可能にする、非常に強力な学習のテクニックの一つということだ。(P. 155)




NHKラジオ英会話の会話、英検のリスニングパートの会話や説明文問題、TOEICのリスニングPart 3・4の会話やトークなどを、スラスラと言えるようになるまで暗唱するのも検索練習です。

【参考】TOEIC Part 3・4が聞き取れない→「暗唱」で道は開ける!

また、ディクテーションシャドウイング中に、音声を止めて、リピーティング(音声を思い出して発話)するのも検索練習になります。

端的に言えば、検索練習とは「思い出して言う/使う」ことです。


「忘れる前」よりも「忘れてから」復習

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学校の先生って「忘れる前にちゃんと復習するように」って言いますよね。

ですが、2016年に忘却曲線や分散学習の仕組みを利用したフラッシュカード(単語カード)アプリ「Anki/AnkiDroid」を使うようになってから、むしろ忘れてから再度復習し直したほうが、より長期記憶に入っていく感覚があったんですよね。

上述した応用言語学者・中田達也教授の著書によると、「遅延効果」と呼ばれるものみたいです。


ある事柄を短期間覚えていたいのであれば短い間隔で、長期間覚えていたいのであれば長い間隔で復習するのが良い、ということです。このような現象は、「遅延効果」(lag effect)と呼ばれています。(P. 49)

……「忘れてから復習をしても意味がないので、忘れる前に復習しなくてはいけない」と言われることがあります。しかし、遅延効果に関して行われた研究結果から考えると、「忘れる前に復習するのではなく、忘れてから復習しないと意味がない」という反対の結論が得られます。(P. 51)


英単語学習の科学
中田 達也
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アメリカでベストセラーになった「脳が認める勉強法」にも記載があります。


「覚えるために忘れる理論」によると、検索の力(=思い出す力)が下がることで、忘れていた事実や記憶を再び見つけたときに、より深い学習を促進するという。

……懸垂(けんすい)をすると筋肉の組織が破壊され、1日休息をとった後で再び懸垂を行うことで、より強い筋肉が形成される。これと同じことだ。(P. 58)

記憶を使えば記憶は変わる。それは、良いほうに変わる。忘れることで、覚えたことがより深く脳に定着する。それは余計な情報をふるいにかけるとともに、覚えたことを一時的に断絶することで可能になる。

断絶した記憶をその後再び引きだすと、検索の力(=思い出す力)と保存の力(=覚える力)が以前よりも高まるのだ。(P. 61~62)




僕の場合、Ankiを使った瞬間英作文では、スラスラ言えるようになるまでは基本的には毎日~数日間隔で練習します。

ですが、180~200 wpmでスラスラ言えるようになった文(マスターしたように思える文)は、数週間~数ヶ月先に設定します(寝かせます)。そうすると、当然ながら忘れるんですよ。わざと忘れさせる

でも、そこから再度反復練習してスラスラ言えるまでトレーニングします。そうすると長期記憶に入っていくんです。

これはAnkiなどの分散学習の仕組みを利用しているフラッシュカードアプリを使っている方はお分かりいただけるはず。


「思い出す・使う」ことで記憶は強化される

脳科学者の篠原菊紀さん、池谷裕二さんも著書で、思い出すことの重要性について触れておられます。


ルール1:覚えようとするな、直後に思い出せ

「覚える」ために必要なのは、「思い出す」こと。覚えた直後に思い出すと、よりよく記憶できます。「覚える⇔覚えておく⇔思い出す」は一方通行ではなく双方向のつながり。覚えた直後に思い出すことが、このつながりを強化し長く覚えておくコツになります。(P. 12)


記憶に深く関係する海馬は、思い出したり、使ったりすると、それが自分にとって大事なことだと判断するらしく、しっかり覚えようとしてくれるのです。入力より出力。インプットよりアウトプット。(P. 15~16)



入力を繰り返すよりも出力を繰り返すほうが、脳回路への定着がよい(P. 166)

私たちの脳は、情報を何度も入れ込む(学習する)よりも、その情報を何度も使ってみる(想起する)ことで、長期間安定して情報を保存することができるのです。(P. 169)




つまり、普段の勉強やトレーニング時に、思い出す回数、使う回数を増やせば、より早く覚えられるようになるというわけです。

英語でよく使われることわざに「Use it or lose it.(使わなければ忘れる)」というのがあるのですが、脳科学的には当たってる感じだなと。

上述したように、僕はAnki瞬間英作文で、使える語彙・文法・構文を増やし、決まり文句(チャンク)を覚えるようにしてきました。

同時に、そうやって覚えたことをオンライン英会話という実践で何度も使ってみて、相手に通じるか、笑いが取れるか試すというのをこの数年間ずっと続けてきました。

実際によく話す(=使う)トピックは面白いくらいに覚えられるので、何度も話していればスラスラと流暢に英語が出てくるようになります。


テストで自分の弱点が見えてくる

ロンドン大学のデボラ・ポッツ(Deborah Potts)とデビッド・シャンクス(David Shanks)という二人の心理学者によって行われた研究(Potts & Shanks, 2014)で、論文のタイトルは、"The Benefit of Generating Errors During Learning"(学習中に間違いを犯すことの利点)というものです。

……学習中に間違いを犯すことは、一見無駄なようで、実は大きな利点があると考えられます。……1つの理由としては、間違いを経験することで、正解により注意を払うようになることが考えられます。(P. 41~42)


英単語学習の科学
中田 達也
研究社
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スラスラと暗唱できるか、ディクテーションできちんと書き取れるか、リピーティングで思い出してスラスラ言えるか、瞬間英作文で覚えたことがオンライン英会話でスラスラと出てくるか、通じるかというのも、言わば自己テストかなと。

自己テストをすることで、うまく暗唱で思い出せない箇所、ディクテで書き出せない箇所、リピーティングでスラスラ言えない箇所、覚えたはずなのに英会話で出てこない英文など、自分の弱点(改善点)が見えてくるのです。


では次に、検索練習を普段の学習・トレーニングに取り入れる方法について、いくつかの例をご紹介していきます。



検索練習を日課に取り入れる

「リスニングを伸ばしたい」

● 初心者 → ディクテーション

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英語初心者の方(TOEICリスニング300点未満/英検2級未満)は、まずは英会話CDや、TOEIC・英検のリスニングパートの音声を使ってディクテーションをお勧めします。

【研究】リスニング能力養成のための自律学習:ディクテーションの効果(PDF)


ディクテーションをやることで、自分が簡単な英語すら聞き取れていない事実に気づくことができ、悲しくなることができます。つまり、ディクテという自己テストをやることで、自分の弱点に気づくことができるわけです。

ディクテで聞き取れなかった箇所は、オーバーラッピングとシャドウイング反復トレーニングします。

ディクテ&シャドウイングした音声が増えれば増えるほど、聞き取れる音が徐々に増えてきます

【参考】聞き取れない原因が分かるディクテーション!やり方・効果


● 中級者 → シャドウイング&リピーティング

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TOEICリスニング300点以上/英検2級以上ある人で、リスニングに苦手意識がある方は、シャドウイングをお勧めします。

【研究】聴解指導におけるディクテーションとシャドーイングの効果について


例えば、”日本語で”ニュースの放送が流れてきたら、初めて聞くニュースでもアナウンサーの発した言葉を瞬時に復唱していけますよね。

つまり、完全に音をマスターしていればシャドウイングは余裕でできるわけですよ。逆に、「スラスラとシャドウイングができない=まだまだマスターできていない発音音の連結・消失が多い」という証拠です。

シャドウイングという自己テストをやることで、自分の苦手な音(弱点)が明確になるわけです。

そして、シャドウイングでうまく発音できない箇所は、必ずリピーティング(音声を止めて、思い出して発話=検索練習)して下さい。

【参考】シャドウイングとオーバーラッピングの違い、効果的な学習方法と注意点


● 暗唱

TOEIC・英検をされる方で「少しでも早く900点を取りたい/合格したい」という方は、シャドウイングと並行して、リスニングパートの英文の暗唱も強くお勧めします。

暗唱とは、覚えたものを何も見ずに思い出すトレーニングです。検索練習です。

以前、TOEICのPart 3・4の会話・トークの暗唱をお勧めしたとき、多くの読者さんから「リスニングで聞き取れる割合が大幅に増えた」「リスニングのスコアが400点を超えた」というメッセージをたくさんいただきました。

TOEICのPart 3・4、英検のリスニングパート、NHKラジオ英会話、洋画や海外ドラマの会話など、複数の文からなるセットを暗唱すると、


そのパート(ジャンル)に

● よく出る語彙・フレーズが身につく
● よく出る会話・トークのパターンが身につく
● 会話・トークの内容を予測しやすくなる


というメリットがあります。

特にTOEICや英検の場合、暗唱し終えたセットが増えれば増えるほど、「聞き取れる割合」や「内容を予測できる割合」が増え、速い英語にも付いていけるようになり、リスニングで聞き取れる割合が増えてきます

何とか頑張って聞き取る、のではなく、自然と耳に入ってくるという状態になってきます。

暗唱について次の記事で詳しくまとめてあるのでぜひ!

【参考】TOEIC Part 3・4が聞き取れない→「暗唱」で道は開ける!


「スピーキングを伸ばしたい」

● 英会話

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オンライン英会話の特にフリートークやニュース記事を使ったディスカッションをやると、英語を思い出して相手に説明したり、相手に質問に答えたりすることになるので、良い検索練習トレーニングになります。


覚えておいてほしい。学んだことを自分自身や自分以外の誰かに説明するという行為は、単純なことのように思えるかもしれないが、慣習的な意味での自己テストの一形態にとどまるものではない。これは非常に効果の高い学習だ

机に向かって教科書をじっと見続ける勉強に比べると、その効果は20~30%高い。……知らないこと、混乱している部分、忘れていたことを、あっという間に明らかにしてくれる。(P. 157)




僕が「EnglishTalk」でオンライン英会話を始めたのは2013年頃ですが、2018年から「ネイティブキャンプ」でもレッスンを始めました。

ネイティブキャンプは1日に何回レッスンを受けても月額料金が変わらないんですよ。また、5分間ディスカッションというひたすらディスカッションに集中できるレッスンがあります。

毎日2回ディスカッションをするようになってから、1日のスピーキング量が大幅に増え、以前よりも英語が出てきやすくなりました

理屈としては、1ヶ月当たりのレッスン数を増やせば増やすほど、英語を思い出す回数が増える(=検索練習)ので、第二言語習得で言うところのスピーキングの自動化が促進されます。その結果、英語がより速く出てきやすくなるというわけです。

【参考】めざせ英語ペラペラ!スピーキング上達に不可欠な3つの練習


● 英語で独り言


英語で独り言というのは、思い出して即興で言うトレーニングです。

ネイティブ並みにペラペラをめざすのであれば、1日1回のオンライン英会話のレッスンでは、スピーキング量が足りないんですよね。1回25分のレッスンだと自分のスピーキング時間ってせいぜい10~15分くらいだと思うんですよ。

ですが、北米の大学生は1日に約1万6千語話すという調査があります。1分当たり160語話すネイティブだとしたら、1日100分は英語を話している計算になります。

なので、英会話以外にも英語を話す時間を作るのは必須だなと。そこで「英語で独り言」です。ぱんぱかぱーん。

英語で独り言もやればやるほど、英語を思い出す回数が増える→流暢さは向上し、アクティブ語彙(使える語彙)も増える→表現力も向上します。

【参考】オンライン英会話 スピーキングの流暢さを促進する「英語で独り言」


● 自分説明書の作成&暗唱

ただ、やってみると分かりますが、英会話も独り言も、ある程度のネタ(スピーキング力)がないとできないんですよ(;´∀`)

音楽の場合、ライブでアドリブ(即興演奏)ができるようになるためには、普段から多くの曲をコピーする(真似して弾く)必要があります。英会話や独り言もこれと同じ。

なので英会話初心者の方はまず、仕事・学業、趣味・興味あること・好き嫌い・長所短所、両親・友達・彼氏彼女について、「自分」に関するあらゆることについて、英語で説明できるようになることをお勧めします。詳しくやり方については次の記事で。

【参考】オンライン英会話初心者のコツは自分を英語で説明できるようになること



 
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