科学研究「英語学習は結局、反復練習が大事やで」

woman-doctor-white-coat-experiment-flask-400x300.jpg

対象:TOEICや英検で伸び悩んでいる/多聴多読で伸び悩みを感じている
推奨:全レベル
読了:約7分(4252字)
公開:2021-01/23
更新:2022-06/19 全体的に加筆・修正
関連:検索練習 / 分散学習 / 反復練習 - 反復回数 - 同じテキストを繰り返す - TOEIC伸びないパターン / 「速さ」よりも「正確さ」

 

なぜ反復トレーニングは大事なのか?

反復で記憶の正確さ・速さ・安定さが向上する

まずは世界の「才能開発所」を回って得た知見をまとめた、アメリカのベストセラー作家の本と、脳科学者の篠原菊紀教授の著書から。


繰り返しに対する世間の評価はすこぶる悪い。実際、繰り返しというと、単純で退屈なためにやる気をなくしてしまう人が多いのが現状だ。

しかしそういう姿勢は見当違いもはなはだしい。

繰り返しはスキルを伸ばすためにもっとも効果的な方法である。なぜなら、脳の神経回路を高速かつ正確にするからだ。(P. 142)
ミエリンは絶縁体である。つまり、絶縁テープが電線を包み込むのと同じ理屈で、ミエリンは脳の神経回路を包み込む役割をしている。それによって信号(神経パルス)の伝達速度を速め、漏電を防ぐことができるのだ。

……練習すればするほど、ミエリンが増えて信号の伝達速度が高速かつ正確になり、スキルをどんどん高めることができるというわけだ。

複数の研究で、練習することが、ミリエンの成長と、読書や語彙、音楽、スポーツなどの多種多様なスキルの向上につながることが指摘されている。(P. 169~170)



……短期記憶のうち、海馬が記憶すべきだ、大事だと判断した記憶は、大脳新皮質にたくわえられ、これが「長期記憶」になります。

……素晴らしい記憶術、というのは結局繰り返しです。繰り返すと、記憶に強くかかわる海馬が、その情報を大事だと判断しやすくなり覚えやすくなりますし、スパイン(ツウ注:神経細胞にある突起のようなもの)も大きくなり、記憶が安定してきます。(P. 64~66)




2008年頃から、やんわりと英語の勉強を始めたのですが、当時は英語を完全にナメ散らかしていました。「劇的に英語力が伸びる魔法の杖」がどこかにあると思っていた時代が僕にもありました。

反復練習の重要性を分かっておらず、「繰り返しなんてつまんねーぜ、ベイベー!(۳˚Д˚)۳」という感じだったんですよね。


TOEICで反復練習の重要性に気づく

2017-05-950.jpg

ですが、2010年の夏に真剣にTOEICの勉強するようになりました。会社の雰囲気が年々悪化してきていたので、一刻も早く転職したかったんです(笑)。

TommyさんHUMMERさんを始め、TOEIC満点ホルダーさんたちのブログをひたすら読み漁った結果、問題集1冊1冊を丁寧に反復練習することが大事だと気づきました。

公式問題集を中心にトレーニングした結果、2012年にTOEIC 900点が取れました。

2015年には英語力を広げるために、英検準1級での勉強を開始しました。2007年第3回~2015年第2回までの24回分の過去問を反復練習でトレーニングしました。

今振り返ると、英検時代はやり込み度が浅く、トレーニングも雑だったなと思いますが、2016年に準1級が取れました


多聴で失敗する

2018年頃から、多聴多読を開始したのですが、「多聴に多めに時間を割く」という戦略は、当時の自分のレベルではまだ時期尚早だったようです。

TOEICに特化して取った900点は「初級」だった件」でも少しお伝えしたように、TOEIC 900点は富士山で言うなら一合目に到達した程度のレベルなので、たとえTOEICリスニングで満点が取れたとしても、自惚れてはいけないです。

結局、多聴を700時間をやったのですが、多聴では聞き取れない音が聞き取れるようにはなりにくいなと。


英検準1級リスニングで7~8割→修行不足

2022年06年現在、英検準1級の過去問でのトレーニングを再開していますが、だいたい正答率が7~8割(素点22~24/29問)なんですよね。

原因分析していると、難しい単語が聞き取れていないのではなく、簡単な英語が聞き取れていないんです。

自分で言うのも変ですが、準1級に合格していても、リスニングで7~8割して取れていないのであれば、リスニング力はショボいと思ったほうがいいなと(笑)。

例えば、英検準1級2022年第1回のリスニングでは、全3086語中、1万語レベル以上の(=頻出度の低い)語彙は、わずか8語でした。

僕の語彙力はTest Your Vocabで9130語(2022年06月)だったので、99.9%以上が知っている語彙なんですね。

ですが、脳内ディクテしていると、


音の連結・消失で聞き取れないものがまだまだたくさんある
● 1万語レベル未満でも「音は聞き取れるけど意味がつかめない」というものもまだまだ多い


ということが分かります。

つまり、「英検準1級リスニングで満点(全29問)に近い素点が取れないレベル」ということは、まだまだ簡単な英語で聞き取れていないものがたくさんあるので、精聴(脳内ディクテシャドウイングリピーティング)による反復練習に時間を多めに割いたほうが良さそうです。

【参考】英検準1級の過去問


そんなわけで今は、英検準1級と並行して、「森田勝之本」「リスニング難度A+」などのネイティブの速い英語、手加減なしの英語が収録されたCD本を使って反復練習をしています。

2021年頃に比べると、「エイゴックス」のネイティブ講師の英語が音的に聞き取りやすくなってきたなと感じています。意味的にはまだまだ。


反復練習の結果、創造性が引き出される

続いて全米ベストセラーのカリスマ教師Doug Lemovさんの本から。これは科学研究ではないですが、興味深かったのでシェアしておきます。


ルール4 無意識にできるようになれば、創造性が解き放たれる

(ツウ注:アメリカで最も偉大なコーチと呼ばれている)ジョン・ウッデンの次のことばが、ルール3(無意識にできるようになるまで徹底する)の次の段階を的確に表している――「反復練習によってできた基礎の上に、個性と創造力が開花する」。

意識せず効率よく動くために、体で覚えることの大切さを示したのがルール3だとすれば、ルール4は、「無意識」が仕事をしているあいだに、「意識」がすることに注目する。(P. 54)

アスリートはよく一定の経験と練習を積んだあと、試合の「スピードが落ちた」ように感じる。これはある時点から、複雑な動きにまわされる処理能力が減って、その分、新たに使える処理能力が増えたせいだ。(P. 55)




2012年にTOEIC 900点を取っても満足に話せなかったので、2013年からはスピーキングを伸ばすために、オンライン英会話を開始しました。

ただ、英会話でのアウトプットは、流暢さを伸ばせるものの、そもそもアクティブ語彙や文法(=使える語彙や文法)の引き出しがなければ話せないと分かっていたので、同時並行で瞬間英作文本を20冊くらいやりました。もちろん1冊1冊を10~20周くらい反復しました。

瞬間英作文で中学レベルの簡単な単語と文法を使えるようにして、毎日オンライン英会話を受けていると、徐々に「英語で何と言えばいいのか分からない!」が減り、流暢さも向上してきます。

そして同時に、自分の伝えたいことや自分の意見が英語で言えるようになる=創造的なことができるようになる。

2016年からは、分散学習がしやすいフラッシュカード(単語カード)アプリ「Anki」を使うようになり、より効率的に反復練習できるようになりました。



反復トレーニングの注意点

漫然と反復してはいけない

「じゃあとにかく反復すればいいのね?」とお思いのあなた。あいや待たれい!

さまざまな分野のトッププレイヤーを研究されている心理学者アンダース・エリクソン教授の御高説をお読み下さい。


目的のある練習あるいは限界的練習の最大の特徴は、できないこと、すなわちコンフォート・ゾーンの外側で努力することであり、

しかも自分が具体的にどうやっているか、どこが弱点なのか、どうすれば上達できるかに意識を集中しながら何度も何度も練習を繰り返すことだ。(P. 211)
フロリダ州立大学の同僚で、ESL(英語が母国語ではない学生)を教えていた教授から、……英語力を伸ばそうとして、英語で制作された字幕付きの映画を一本選び、繰り返し観た学生もいるという。

最初は字幕を隠してセリフを理解しようと努め、それから字幕を見て理解が正確であったかを確かめた同じ会話を繰り返し聴くことで、毎回違う映画を大量に観た場合より、はるかに速く英語の聞き取り能力が向上したという。

ここでは、学生たちがただ同じことを繰り返していたのではない点に注目して欲しい。彼らは毎回自分が何を間違えたのかに注意を払い、それを直していたのである。これは目的のある練習だ。

やみくもに同じことを何度も繰り返すのではまったく意味がない。反復練習の目的は、自らの弱い部分を見つけ、それを集中的に強くしていくこと…… (P. 212-213)




僕がブログで、「闇雲にシャドウイングを繰り返す前に、まず0.7倍速ディクテーション自分が聞き取れなかった箇所(=自分の弱点)を明確にしたほうがいい」と、小言を言うオカンのように口酸っぱく言ってきたのは間違ってないなと。

2008年に初めて受けたTOEICではリスニングが310点でした。その頃は今ほど本気で英語学習に取り組んでいなかったんですよね。

で、ディクテーションもやらずに、速度も落とさずに、まさに漫然とシャドウイングをやっていました。

2年後の2010年に受けた2回目のTOEICのリスニングは320点でした。

まったく伸びてない(笑)。

10点なんて誤差ですからね。TOEICに関係ないテキストをやっていたのも大きな原因ですが、それでも驚くほど伸びなかったんですよね。

なので、量(反復練習)は大事だけど、質(練習の質)も同じくらい大事なわけです。

【参考】TOEICリスニング満点の僕が2年勉強しても10点しか上がらなかった頃の話


 
同じカテゴリーの記事

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)


PAGE TOP