[英語] シャドウイングで効果を感じない人に試して欲しい6つの処方箋

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対象:シャドウイングやってるけどなかなか上達しない・伸びない・効果を感じない
推奨:全レベル
読了:約7分(4255字) 
公開:2022-06/13 
更新:2022-07/04 部分的に加筆・修正
関連:発音 / 音変化 / ディクテーション / シャドウイング - 伸び悩み / リピーティング / ICレコーダー

お陰様で2016年に英検準1級に合格し、2017年にTOEICリスニング満点が取れたのですが、それでもリスニングはずっと苦手意識がありました。

今まで1万時間以上英語を勉強してきた中で、最も大きな失敗の1つはシャドウイングを軽視してきたことです。

英語を始めた頃に、シャドウイングを1年くらいやったのにあまり伸びなかったことがあり、それがちょっとトラウマになって、しばらくシャドウイングを敬遠していた時期がありました。

もしあのとき、シャドウイングの効果と正しいやり方さえ知っていれば、今頃もっとリスニング力は上がってたのは間違いないなと。

また、過去にいろんな読者さんと話してきて、「シャドウイングやったけど効果を感じなかった」「難しすぎて挫折した」という方もわりといらっしゃったので、自分が失敗した要因も交えて、改善策をシェアしておこうと思います。

リスニング上達の一助となれば幸いです(=゚ω゚)ノ
 

シャドウイングで上達しない場合の6つの対処法

(1) ディクテーション

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英語初級者で「シャドウイングをやっていて効果を感じない」という方は、一度「ディクテーション」を試してみて欲しいです。

ディクテーションというのは、英文スクリプトを見ずに、聞こえてきた英語音声の文を紙に書き取る or PCやスマホでタイプする訓練です。

というのも、初級者だと、そもそも英語の「発音」を正確に聞き取れていない可能性が非常に高いからです。

当然、「正確に聞き取れていない」=「シャドウイングする際に、正確に発音できない」ことになります。

正確な発音ができていないままトレーニングを続けても、正確に聞き取れるようにはならないというのは、何となく分かってもらえると思うんですよ。


正確さは初期の段階ではとくに重要である。なぜなら、最初の何度かの繰り返しが将来の神経回路を確立するからだ。

神経学者はこれを「雪山のそり」と呼んでいる。最初の何度かの繰り返しは、新雪に残る最初の形跡になるからだ。その後の繰り返しでは、そりはそれまでの形跡にしたがう傾向がある。

ハードスキルを学ぶときは、正確に測定しながらゆっくりおこなおう。1回にひとつの単純な動作をおこない、繰り返しによって完璧に仕上げてから次に進もう。とくに最初はミスを発見し、修正することを心がけよう。(P. 43)




ディクテーションをやると、自分がどの発音、音の連結・消失を聞き取れていないのか、また、音は聞き取れるけど意味がつかめない箇所など、聞き取れない原因を正確につかむことができるんですよね。

【参考】科学研究「初めてやる練習は”速さ”よりも”正確さ”を重視しよう」


また、TOEICスコアや英検合格など急ぎでないのであれば、発音練習も同時に進めていくことをお勧めします。


自分の発音が正確になればなるほど
→ リスニング時の「音の処理」が速くなる
→ その分、リスニング時の「意味の処理」に脳のリソースを多く回せる
→ より早口の話者の英語を聞き取れるようになる


という効果があります。

【参考】やらない人は損してる!発音を学ぶことで得られる4つの効果


(2) 精読(辞書で調べる)

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知らない単語はもちろん、知っている単語・フレーズであっても、「これってどういう意味なんだろう?」「なんでこんな日本語訳になるんだろう?」と疑問に感じたら辞書で調べるクセを付けて下さい。意外な用法や意味があったりします。

最近「恋するブルックリン」という、40代男の僕にはいささか恥ずかしいタイトルのテキストでトレーニングしているのですが、「just like that」というイディオムに出会いました。

文脈的に「ちょうどそんな感じ」という意味ではなさそうだなと。気になって英辞郎で調べてみたら「すぐに、あっという間に」という意味がありました。

また、昔TOEICをメインで勉強していたとき、「want to」が出てきて、文脈的に「~したい」という意味ではなんかおかしいなと思い、調べてみたら「You (might) want to do」の形で「~したほうがいい」という意味になるパターンがあることを知りました。Weblio「want」の他動詞A-3の用法です。

というわけで、音だけでなく、意味もできるだけ正確に理解しないと、「音は聞き取れるけど、意味がつかめない」という状態が残ってしまいます。

【参考】TOEIC スコアもリーディング力も向上するPart 7「精読」勉強法


(3) 速度を”大幅に”下げる

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僕が英語の勉強を開始した頃、シャドウイングを1年くらいやり続けたのですが、ほとんど聞き取れるようにならなかったんですね(笑)。

その最大の原因がスピードを落とさずに、最初からオリジナルスピードで練習していたことです。

オリジナルスピードのままで練習してしまうと、自分が発音できない箇所を何となくごまかしてテキトーにやってしまうので、そこはいつまで経っても聞き取れないまま残ってしまうんです。

リスニングに限らずですが、トレーニングの目的というのはできないことをできるようにすることです。

【関連】英語上級者になる秘訣は?科学研究「上級者はできないことに多くの時間割くよ」


そして、聞き取れなかった箇所を聞き取れるようにするためには、上述したように、自分が正確に発音できるまで反復練習する必要があります。

つまり、自分がスラスラと発音できない箇所をおろそかにしたまま繰り返し練習してもほとんど効果はないわけです。


(フィギュア)スケート選手を対象とした研究で、一流選手ではない人たちは自分がすでに「できる」ジャンプに多くの時間をつぎ込んでいることがわかった。

一方、トップレベルの選手は自分が「できない」ジャンプにより多くの時間を費やしていた。(P. 260~261)



最近「英語でトラマを楽しもう!(Amazon)」という、ラジオドラマを収録したCDで20~30日間毎日シャドウイングするトレーニングを終えたのですが、始めた頃は速すぎてほとんど聞き取れませんでした(笑)。

特にMelindaという高校生の女の子が早口なんです。

TOEICや英検準1級の会話パートの速さは約160~200 wpmくらいですが、Melindaは最も速いときは250 wpmは超えているなと。

体感的にはHololive ENのAmeliaのような感じです。Melindaの声優さんはおそらくプロなので、Ameよりも発音が明瞭で聞き取りやすいのですが、速さはこんな感じ。




Melindaと彼女の両親は200 wpm以上で話すことが多いので、ICレコーダーを使って、一番最初は0.8~0.9倍速で練習を開始しました。

ですが、それでもスラスラと言えない箇所がたくさんあったので、0.6~0.7倍速でやり始めました。特にMelindaが早口でまくしたてる場面では、0.4~0.5倍速からやることもありました。

今使っているICレコーダーボタン1回で速度変更の画面をすぐに開けるので、シャドウイング中に速度を変えるのが苦にならないんですよね。

また、物理ボタンのため、スマホのように画面を見なくても押せるので、歩きながらシャドウイングするのに最適です。PR広告ではありません(笑)。

「英語でトラマを楽しもう!」は今年2022年03月から3ヶ月かけてトレーニングしてきた甲斐もあり、早口のネイティブの英語が”音的に”聞き取りやすくなったなと。(意味的にはまだまだっすw)

というわけで、少しでも速いと感じたり、スラスラと言えない箇所が多いと感じたら、テキトーにごまかさず、速度を落として練習したほうがいいです。

先程もお伝えしたように、テキトーにして終わらせた箇所はそのまま残り続けるからです。


人々は正確さをおろそかにして、一時のスリルを追い求める傾向がある。だから意識的にペースを落とすことが重要なのだ。

超スローモーションの練習は拡大鏡のように作用する。つまり、ミスをはっきりと認識し、それによって修正することができるのだ。

練習のときは、次の格言を肝に銘じよう。「大切なのは、どれだけ速くできるかではなく、どれだけゆっくりと正確にできるかだ」(P. 95)




【参考】科学研究「初めてやる練習は”速さ”よりも”正確さ”を重視しよう」


(4) リピーティング

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リピーティング」というのは、音声を止めて、英文スクリプトは見ずに、聴き取った音声を思い出して、口で再現するトレーニングです。

「Read and look up」に近いかもしれないですが、read(読む)わけではないので、「Listen and look up」と言ったほうがいいかもしれません。

シャドウイングをやっていると、間違えてもついつい音声を止めずに流してしまいがちになるんですよね。これがやっぱりよくないなと。

リピーティングは2020年頃から取り入れ始めました。

スラスラと言えない箇所や、意味がつかめないと感じた箇所は、音声を止めて、英文は見ずに、音声を思い出してスラスラと言えるまでリピーティングしたほうがダラダラと何度もシャドウイングし続けるよりも明らかに上達が早いなと。

「思い出す」ということは、実験心理学の検索練習(テスト効果)に当たるため、記憶に残りやすくなるはず。

シャドウイングは聞いてすぐに発話しますが、リピーティングは音声を止めて「思い出して発話しないといけない」という点で、検索練習的にシャドウイングよりも負荷が高いからではないかと推測しています。

そんなわけで、リピーティングを丁寧にやるようになってから、僕のシャドウイングのトレーニングの質は確実に向上したと感じています。

【参考】リスニング上達速度を加速するリピーティングのコツ・効果・やり方


(5) 20日間反復する

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まさか2~3日練習して終わり、という方はおられないですよね?

【参考】科学研究「英語学習は反復練習が大事やで」

個人的には反復「回数」以上に、反復「日数」を意識したほうがいいと感じています。

学生時代、テスト前日に一夜漬けで勉強したことはたいてい覚えてないなと(笑)。数学の対数とかほとんど勉強しなかったのでほとんど忘れています。


一気に集中して勉強するのと、勉強時間を「分散」するのとでは、覚える量は同じでも、脳にとどまる時間がずっと長くなるのだ。(P. 97)


ある研究グループは、小学校3年生に足し算を教える時間を毎日1回設けることを10日間続けるほうが、毎日2回設けて5日間続けるよりもはるかに効率的だと実証した。

別のグループは、細胞、有糸分裂、染色体といった生物の定義を中学生が学ぶ場合、1回の授業で学ぶよりも、間隔をあけて複数回に分けて学んだほうが記憶に残りやすいことを実証した。(P. 109)




1万時間以上勉強してきた経験では、リスニングのトレーニングの場合、10日間でも短いと感じています。

なぜなら、10日間くらい反復してみて、ある程度スラスラと言えるようになってから、発音や意味的に気づくこととかがけっこうあるんですよね。

それらを定着させるためには、そこからさらにトレーニングしないといけないんです。

以前は10日間しか反復していなかったのですが、その頃の定着度合いはかなり低かったなと反省しています。

英語力が高い人なら10日間でも十分かもしれないですが、初級~中級レベルの人は20日間くらいはやらないと定着度・完成度ともに低いと感じています。

【参考】言語学者「勉強スケジュールは分散したほうが効果的やで」分散学習


僕が尊敬している、多聴に4000時間以上を費やしておられるYukoさんも、初期の頃はシャドウイングを毎日されていたようです。


700ー800時間くらいでニュース英語が良く聞き取れるようになり、TOEICのリスニング満点も取れました。このころ1年ほどEnglish Journalの付録CDを月30回程聞き、シャドーイングを開始しました。

【出典】リスニング2000時間で得られたこと


(6) 暗唱

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今まで猛プッシュしてきたシャドウイングですが、英語初級者がリスニング力を伸ばすためにはシャドウイングだけでは足りないと考えています。

シャドウイングは大きく分けると2つあります。発音やイントネーションなどを意識した「プロソディー・シャドウイング」と、内容を意識した「コンテンツ・シャドウイング」です。

そして、あまり聞き取れない初級者の場合「コンテンツ・シャドウイング」はかなり厳しいと思うんです。僕はそうでした。

というのも、初級者の場合、発音やイントネーションなどのストックがほぼゼロなので、シャドウイングをすると脳のリソースのほとんどはプロソディー(発音やイントネーション)に使ってしまうんですよね。結果、コンテンツの(意味をつかむ)ほうにリソースを回せないんです。


染谷(1996)によると,プロソディーは自然なコミュニケーションにおける意味伝達のおよそ30~40%を担っているとされるが,これを逆の視点からとらえれば,たとえシャドーイングにより英語のプロソディーが完全に獲得できたとしても,それは英語リスニング能力向上への必要条件を100%満たすわけではなく,その内の30~40%の貢献度にすぎないことを意味する。

したがって上記実験において,ほとんどのシャドーイング群に有意差が認められなかったのも,リスニング能力テストの30~40%を占めるスキルのみをシャドーイングで高めていたためと言えるであろう。

この点については玉井(2002)も「シャドーイング技術=リスニング力」という等式は成り立たないと実験結果から導き出しており,その二者間の相関が低い理由として,シャドーイングによる音韻分析段階のプロダクトと,リスニングテストによる意味処理までなされた最終的なプロダクトを比較していたためと指摘している。

【出典】逐次通訳メソッドによるアウトプット練習が 英語コミュニケーション能力に与える影響(PDF)


もしTOEICのPart 3・4や英検のリスニングパートなどで「シャドウイングで、音が聞き取れる割合は増えてきたけど、意味がパッとつかめない」という壁にぶつかってきたら、「暗唱」をやっていくことをお勧めします。

TOEICのPart 3・4や英検のリスニングパートのように、ある程度の長さのある会話やトークを丸ごと暗唱すると、「決まり文句(定型表現・チャンク)」と「予測文法」が身につくからです。


ボキャブラリーとは、1つひとつの「単語」だけではありません。複数の語から成る「定型表現」(formulaic sequences)もボキャブラリーの一種です。

……一般的に定型表現は、ネイティブスピーカーの頭の中でひとつのかたまり(「チャンク」とも言います)として記憶されています。(P. 83)

定型表現は、英語のネイティブスピーカーが日常的に使っているものばかり。英語で書かれたものの約50%、会話の約70%は定型表現であると示す研究もあります。(P. 84)


「英語の学び方」入門
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つまり、決まり文句(定型表現・チャンク)のストックが増えるほど、スピーキングが伸びるだけでなく、リスニングで瞬時に意味がつかめる割合が増えてくるわけですね。


インプットを大量かつ継続的に取り込むことにより、その言語の「予測文法」(expectancy-grammar)が身についていく(Oller, 1976)。

例えば私たちは"I'm afraid ..."と聞くと、"I'm afraid you'll have to wait."、"I'm afraid he's on another line."など、たいていは何か良くないことが続くと予測する。

……つまり「予測文法」を身につけると、無意識のうちに瞬時に次に何が来るのかを予測することができるようになる。

このような先読みに類似した概念である行間読みは、インプットを大量に取り込むことによってはじめて身につく能力である。(P. 36)




つまり、TOEIC Part 3・4で暗唱をやればやるほど、TOEICよく出る決まり文句(語彙やフレーズ)が身につき、会話やトークの流れを予測できるようになります。

また、英検のリスニングパートの会話文や説明文で暗唱をやればやるほど、英検によく出る決まり文句が身につき、会話や説明文の流れを予測できるようになります。

【参考】TOEIC Part 3・4が聞き取れない→「暗唱」で道は開ける!
【参考】言語学者「英会話を上達させたいなら決まり文句(チャンク)を覚えるといいで」



 
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