[英語] 暗唱(例文暗記)って効果あるの?言語学者「3つの効果があるよ」

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対象:暗唱の効果を知りたい
推奨:初心者🔰~
読了:約8分(4548字)
公開:2022-07/16
関連:検索練習 - 暗唱の効果 - TOEICでの暗唱 / 決まり文句(チャンク) / 感情を込める

 

暗唱 3つの効果

(1) 決まり文句が身につきやすい

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まず、「英会話の約7割は決まり文句(チャンク)でできている」という研究があるんですよ。

つまり、決まり文句を意識して覚えていけば、リスニング・スピーキングを効率的に伸ばせるわけです。

それで、応用言語学者の白井恭弘教授によると、暗唱はその「決まり文句」を身につけるのに効果的だそうです。


例文暗記の効用

……実は日常言語のかなりの部分が決まり文句で構成されている、という研究もあります。

第二言語のデータベースを増やし、自然な表現を身につけるために、特に母語と第二言語の距離が遠い場合は、よく使う表現や、例文、ダイアローグなどを暗記することが効果的でしょう。(P. 167)




例えば、公式TOEIC L&R問題集のリスニングPart 3・4の会話やトークで暗唱すると、Part 3・4によく出る決まり文句が身につきます。


公式TOEIC
Listening & Reading 問題集 8

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2021-10/15

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英検過去問リスニングで暗唱すると、やはり会話や説明文問題によく出る決まり文句を覚えてきます。

暗唱した会話・トーク・説明文が増えるほど、決まり文句のストックも増えてくるので、その結果、聞き取れる割合も増えてくる(→スコアも上がってくる)というわけです。

【関連】TOEIC Part 3・4が聞き取れない→「暗唱」で道は開ける!


また、英会話学習者は、洋画やドラマなどで暗唱するときに、感情を込めて(話者になりきって or 状況をイメージして)暗唱すれば、記憶に残りやすくなりオンライン英会話などでも出てきやすくなります

【科学研究】リスニング・スピーキングで早く上達したいなら感情を込めてやろう


(2) アウトプットの正確さの向上

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スピーキングやライティングがある程度できるようになってくると、「正確さ(&自然さ)」が気になり始めるんですよね。

特に文法的に、文脈的に正確に話せて(書けて)いるのかどうか

この問題を解決する手段の1つとして、上述した白井恭弘教授は「暗唱」を勧めておられます。


母語話者(ネイティブ)は、どういう言い方がふつうだと言う情報を、子どものころから無数の文や表現を聞くことによって身につけるわけです。

……第二言語習得においても、……まず多量のインプットを聞いたり、読んだりすることで何がおかしいかわかるようになるのです。

ただ第二言語習得では、インプットの量が少ない場合が多いですし、臨界期の話の時に紹介したように、母語に因る干渉のような問題もあり、なかなかうまくいかないわけです。では、それを補うためにはどうすればいいか。

ひとつ考えられるのが、例文暗記です。

第二言語のデータベースが足りない場合には、よく使われる自然な文、表現を多数覚えてそれをもとに単語だけ入れ替える、ということをすれば、奇妙な文が出てくる確率はかなり下がります

さらに記憶した文がすらすら出てくるようになれば、その文は自分に対するインプットにもなり、さらに(1)の自然な習得にも寄与します。

……外国語学習においてネイティブに近くなった「例外的成功者」が、共通して記憶ストラテジーに頼っている、ということも、例文暗記の効用を示唆しています。(P. 116)

【出典】外国語学習の科学


多聴多読がすぐにできれば理想的ですが、リスニングは7~9割分かるものをやらないと効果は薄いので、初級者には難しいんですよね。

また、中級者であっても、ネイティブ向けの洋画・ドラマ・YouTube動画で、”字幕なしで”7~9割理解できるものってそう多くはないと思うんですよ。

お陰様でTOEICリスニング満点英検準1級が取れましたが、そのレベルでも、字幕なしだと洋画・ドラマはまだまだ厳しいです。

そこで、暗唱というわけです。

暗唱 VS 瞬間英作文

個人的に、スピーキングやライティングの正確さ(&自然さ)の向上という点において、短文がメインの「瞬間英作文」よりも、ダイアローグ(会話)や長文でやる「暗唱」のほうが上だと感じています。

例えば、「Thank you.」と言われたら、「You're welcome.」「No problem.」「Anytime.」などで返すといった、あいづちや応答的な決まり文句がありますよね。

こういうのは、瞬間英作文よりも、洋画やTOEICや英検などのダイアローグ(会話)を暗唱したほうが身につきやすい(≒英会話のスピーキングで出てきやすい)なと。

上述した決まり文句(チャンク)も、ダイアローグを丸ごと暗唱したほうが、文脈の流れごと覚えられるので、使い所を間違う確率を減らせるなと。


ただ、暗唱は骨が折れますし、自分がすでに使える文も含むので、非効率だと感じる部分もあるんですよね。

苦手な文・文法・フレーズだけを集中してトレーニングしていけるという点では、フラッシュカード瞬間英作文のほうが効率的だなと。

このように、暗唱と瞬間英作文はどちらも一長一短あるので、目的によって使い分けるのが大事だと感じています。

【参考】言語学者「瞬間英作文は"使える文法"と"決まり文句"の習得に効果的だよ」


(3) 「使える文法」が身につく

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例文を暗記することで、「文法が分かる」から「文法が使える」ようになります。

第二言語習得が専門の中田達也教授が著書で「使える文法」を身につける手段の1つとして、「例文暗記」を挙げておられました。


Q1 英文法の効果的な学習法を教えてください。

A. 「言語重視」(language-focused)の学習と「意味重視」(meaning-focused) の学習の組み合わせ、「使える」文法を身につけましょう。

コミュニケーションで英語が使えるようにするには、まずは基礎的な文法トレーニングを行い、文法力の下地となる英語表現を頭の中に取り込む (専門用語では「インテイク [intake] すると言います) 必要があります。そのようなトレーニングは、言語重視の学習に分類されます。……

例文暗記
例文を口からスラスラ出てくるようになるまで暗記すること。暗記する例文としては、会話や作文などにそのまま使える実用性が高いものにすること。【関連研究】Wray & Fitzpatrick (2008)(P. 32)

口頭ドリル・例文暗記・ディクテーションといった言語重視の学習は、基礎的な文法力をつける上では効果的です。

一方で、実際のコミュニケーションで文法を使いこなせるようになるには、インプット・アウトプットを通した意味重視の学習も不可欠です。(P. 33)


英語学習の科学
中田 達也・鈴木 祐一・他9名
研究社
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【注意】文法事項を意識して暗唱

暗唱が文法力向上に効果があるとは言え、ただの丸暗記では効果は薄いと考えています。

暗唱するときに、時制・文型・前置詞・冠詞・単複・代名詞など、文法事項に意識を払いながらやる必要があるなと。

もちろん不明点な文法事項が出てきたら、その都度文法書で調べる必要があります。

【参考】英文法が苦手な人にこそ読んで欲しい!おすすめ文法書8選と勉強法


リスニング・リーディングにも効果がある

例えば、2022年現在、公式TOEIC L&R問題集リスニング英検過去問リスニング森田勝之先生のドラマCDでトレーニングしていて、音は聞き取れるけど「意味が理解できない」という箇所がしばしば出てくるんですよね。

こういうときは、単純に未知語というケースもありますが、文法・構文が(瞬時に)理解できていないケースも多いなと。

そんなときは、シャドウイング中に、その箇所で音声を止めて、リピーティング(思い出して暗唱)するようにしています。

シャドウイングだと流してしまいがちですが、文法事項を意識してリピーティングするとなると、かなり負荷がかかるんですよね。その分効果はあると感じています。



暗唱で「予測文法」も身につく


第二言語習得の本には「暗唱をやると、予測文法が身につく」といった表記は、今のところ見かけていません。

ですが、自分の経験上、暗唱をやると「予測文法が身につきやすい」と感じています。

そして「予測文法」はかなり重要な概念だ考えているので補足しておきますね。


インプットを大量かつ継続的に取り込むことにより、その言語の「予測文法」(expectancy-grammar)が身についていく(Oller, 1976)。

例えば私たちは"I'm afraid ..."と聞くと、"I'm afraid you'll have to wait."、"I'm afraid he's on another line."など、たいていは何か良くないことが続くと予測する。

……つまり「予測文法」を身につけると、無意識のうちに瞬時に次に何が来るのかを予測することができるようになる。

このような先読みに類似した概念である行間読みは、インプットを大量に取り込むことによってはじめて身につく能力である。(P. 36)



「予測文法」を身につけるとは?

インプットを理解することがなぜ言語習得につながるのでしょう。ニューメキシコ大学のジョン・オラーによれば、その言語の「予測文法」が身につくからだ、ということになります。

たとえば、英語がある程度できるようになった人は、John gave me... と聞いたら、次に何がくるかは、無意識のうちに瞬時に予測することができます

John gave meという情報をもとに、次にくるのは名詞で、多分プレゼントだろうとか、多分人ではないだろうとか、可能性の高いものを無意識のうちに予測することができるのです。

このような能力は大量の英文を聞いたり読んだりして理解しているうちに、身についてきます。日本語に訳しているのでは身につきません。会話をするということは、意味と形の関連づけを、かなりのスピードでしているということです。

いちいち日本語に直している時間はありません。そのためには、このような無意識に使える「予測文法」が必要不可欠なのです。(P. 136)

【出典】外国語学習の科学

われわれの出した結論は、優れた選手ほど次に何が起きるかを予測するのが得意なのは、より可能性の高い展開をいくつも予想し、比較検討し、最も効果の高そうな行動を選択する能力と関係しているということだった。(P. 104)




先程少し触れましたが、TOEIC 900点英検準1級を取ると、それぞれによく出る決まり文句(チャンク)が身につきます。

それらが「予測文法」になるんですね。

ダイアローグ(会話)を暗唱すればするほど、会話の約7割を占める決まり文句が増え、冒頭の音声を聞いただけで、会話の内容や流れがある程度予測できる割合も増えてきます。

するとリスニング(&リーディング)がラクになってくるんですよね。「聞き取る」ではなく「入ってくる」という感覚になってきます。

というわけで、暗唱をやると「予測文法」も効率的に身につけられるよ、という話でした。



 
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