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公開:2017-06/02
更新:2017-09/25 部分的に加筆・修正
もちろん、量(勉強時間)だけでなく、質(勉強のやり方や使う素材)によっても、たどり着ける場所や成長速度は異なります。
なので「○○○時間勉強したら、必ず△△△のレベルに到達できる」といったものはないですが、それでも何か目安みたいなものがあったらいいなと思うんですよ。
例えば、元々の英語力や1日の勉強時間によって上下しますが、900点に到達する人の多くは、トータルで2000時間以上は勉強していて、毎日2~3時間くらい勉強しています。
目安であっても、こういった数字があると、
「かなり勉強してるつもりでいたけど、900点ホルダーは2000時間も勉強してるのか!もっと勉強しないと」
「2000時間以上勉強してるけど、まだ900点に届いてない…。勉強のやり方を見直すか」
「毎日2時間も?!自分は1時間も勉強してないな…そらスコア上がらんわけや…」
という具合に、自分の勉強を振り返るキッカケになるんですよ。僕が2010年の夏に、TOEICを本気で勉強することに決めたのも、TOEIC満点ホルダーの方々が、毎日3時間くらい勉強していたからなんです。
そんなわけで、この1年、準ネイティブレベルの英語力についていろいろ調べてきたので、今回は勉強時間についてまとめてみることにしました(・∀・)/
ちなみに、このブログでは「準ネイティブレベル」=「CEFR C2レベル」or「字幕でなしで映画が見られる&辞書なしでペーパーバックを読めるレベル」を想定しています。
総勉強時間
● 英語圏の5歳児、17520時間
TOEFL CBT/iBTともに満点で、SLA(第二言語習得)を研究しておられる青谷正妥教授の著書に興味深い項目があったのでご紹介します。英語圏の幼児は三単現のsを本当に理解するには6年くらいかかりますが、5歳児になるころまでに母語を聞く時間数は17520時間だそうです(Morley, 1991)。
これが現実ですので、平均的な英語学習者が10年・1万時間を要しても何の不思議もありません。 (P. 27)
僕は2017年05月に、英語の総勉強時間が9000時間を超えたのですが、いまだに簡単な英語が聞き取れなかったり、言えなかったりすることが多々あります。
なのでこの「5歳児になるころまでに母語を聞く時間数は17520時間」を知ったときに、9000時間は全然少ないんだと、妙に納得できたんです。
これまで、TOEIC 930点に到達し、英検準1級を取得し、オンライン英会話を5年やってきました。
これぐらいやれば誰でも、ある程度は話せるようになると思いますが、自分の会話力を冷静に分析してみると、5歳児には敵わないと感じています。YouTubeに5歳児が話す動画があるのでちょっと観て下さい。
他にもいくつかあるので、時間のある方はぜひ。
● 5 year old Ethan talks about his future
● 5 year old Gus having a funny conversation about discipline.
彼らと自分の会話力を比較してみると、自分が普段よく話すトピックであればそこそこ流暢に、また5歳児にはない語彙力も備えていると思いますが、文法や語彙の正確さ(自然さ)は彼らのほうが上だなと。
また、リスニング力は完璧に負けてます。お母さんの超早口の英語も100%聞き取って返答しているように見受けられます。毎日数時間、このスピードの英語を聞いてたら、そら聞き取れるようになるわなと。
【参考】「映画・海外ドラマを字幕なしで」への第一歩に最適な本
【参考】ネイティブの速い英語に慣れる!おすすめYouTuberまとめ
● 同時通訳者、2万時間
次に、いろんな記事でご紹介していますが、同時通訳者の関谷英里子さんは、著書
によると、20000時間、英語を勉強されてきたそうです。
Woman typeの記事によると「6歳から9歳まで家族でイギリスに住んでいました/高校の時、1年間イギリスに留学もしています」ということなので、勉強時間だけでなく、「英語に触れている時間」も換算すると、数万時間に到達するのではないかと思うんです。
後ほどご紹介する、『英語耳』の著者・松澤喜好さんも、仕事で英語を使っておられ、おそらく数万時間は英語に触れておられると考えられます。
そんなわけで、本気で準ネイティブレベルに到達したいなら、最低でも2万時間は英語を勉強するという覚悟をしておいたほうがいいなと。
ちなみに、1日3時間勉強すると約20年、1日6時間だと約10年で、2万時間に到達します。
【参考】英語を5000時間勉強したので継続のコツをまとめてみた
1日の勉強時間
僕は2017年現在、月140時間(1日4~5時間)くらいは英語に触れるようにしています。
これが月100時間くらいになったり、週5回受けている【 オンライン英会話 】で1~2週間くらいできない日が続いたりすると、スピーキング・リスニング・リーディングが下がるのが如実に分かるんですよ。
なので1日(1ヶ月)の英語の勉強時間もかなり重要な目安だと考えています。
● ある応用言語学者の提言
SLA(第二言語習得)やバイリンガルを研究されているFred Genesee教授が「A Short Guide to Raising Children Bilingually (PDF)」で次のように述べておられます。We do not have solid scientific evidence to tell us what that minimum amount of exposure is.
Our best guess at this time is that bilingual children must be exposed to a language during at least 30% of their total language exposure if their acquisition of that language is to proceed normally.
Less exposure than this could result in incomplete acquisition of that language. (P. 6)
意訳すると、「最低何時間触れるべきという科学的根拠はないが、我々の推論では、子供たちが獲得しようとしている言語を順当に身につけられるようにするためには、少なくとも全体の30%はその言語に触れさせるべきだ。それよりも少ないと、その言語の獲得は不完全になる可能性がある」そうです。
科学的根拠はないと言うことですが、バイリンガルを研究されている教授の「30%」という推論は1つの目安になると思ったんです。
また、これは子供をバイリンガルする方法に関する内容ですが、「子供をバイリンガルにしたいなら30%」なのであれば、大人の第二言語習得が、30%よりも少なくていいということはないはずですよね。
上記のPDFを読んだ限りでは、「トータルで言語に触れる時間の30%」の定義がイマイチ分からないのですが、単純に睡眠7時間として1日24時間から差し引くと17時間で、その「30%」は約5時間になります。
● トライリンガルの幼少期
中国で生まれ、小1で来日し、小6でカナダに渡ることになった、トライリンガル(中英日)の剣崎宗二さんも小学生の頃、中国語と日本語の両方に一定量触れておられたようです。(小学校の頃の)恩師はこう答えました。
「この子の日本語を心配する必要はありません。彼はまだ幼い。成長するにつれ、自然に覚えるでしょう。
それよりも私が心配しているのが、その過程で彼が中国語を忘れないか、と言う事です。なので…家では必ず。必ず中国語教育を施してください」
かくして剣崎の生活は家の扉を境として、2つに切り分けられました。外に出ればそれは日本語の世界。家に入ればそれは中国語の世界であったのです。
……
我が恩師の父親への一言が無ければ、今のトリリンガルにはならなかったでしょう。言語を同時に維持するには、やはり「領域を切り分ける」のがベストではないかと自分は踏んでおります。
【出典】母語を奪うこと、セミリンガルにすることの残酷さ
これは僕の勝手な推測ですが、剣持さんは学校で6時間(放課後も入れると9時間)くらい日本語に触れ、朝学校に行くまでと学校から帰ってきてからの4~7時間くらい中国語に触れておられたのではないかと。
「真のバイリンガルは努力家だった件」でもご紹介していますが、バイリンガル(予定)の子供たちは、家庭と学校でそれぞれの言語に触れているケースが多いです。
● 映画を字幕なしで見られる人が英語に触れている時間

『英語耳』の著者・松澤喜好さんは、著書によると、映画を字幕なしで観ることができ、ペーパーバックも100%読めるレベルに到達されているそうです。
その『英語耳』に、松澤さんが英語に触れている時間が記載されていたので、ご紹介しておきます。
現在(おそらく2004年頃)の私の仕事は、米国の会社との共同開発、技術の共通化等の推進役です。このために、仕事で英語に触れる機会が平均の人よりもかなり多いのです。勤務時間の半分ぐらいは英語に接している感覚があります。
最近の1年間で英語に触れている時間をざっと計算すると、毎日平均6時間ぐらいになります。だいたいの内訳は以下のようになります。
1 読書、10000ページ程度:450時間
2 仕事で読む資料、メール:400時間
3 仕事で書く英語の資料、メール:450時間
4 仕事&趣味で見る英語のウェブサイト:100時間
5 音楽CD/MD:200時間
6 AFNなどのラジオ:100時間
7 映画ビデオ、洋画TV、衛星放送:350時間
8 英語の仕事ミーティング:150時間
以上の合計2200時間/365日。1日平均6.0時間です。(旧版P. 153)
「MD」とか「ビデオ」とか時代を感じるなー(笑)
また、当ブログでよくご紹介している「字幕なしで観ることのできる映画がかなり増えてきた印象」というレベルに到達されているyukoさんは、2014年の時点で4000時間の多聴をされています。
お2人のアクティビティを見ていると、ますます準ネイティブレベルに到達するためには「多聴多読」は必須だと思うようになってきました。
初級者の頃は、精聴精読を中心にしたほうが時間対効果は高いですが、中級者(CEFR B2~C1)になってきたら、多聴多読を取り入れていく必要がありそうです。
というのも、精聴精読中心だと、よく出る語彙・表現・文法は定着しやすいですが、マイナーな語彙・表現がなかなか定着しないからです。
【参考】準ネイティブレベルの英語力に到達するのに必要な語彙力
● 準ネイティブレベルになる = 英語で仕事する

仕事で英語を使う機会がない社会人が、プライベートで1日5~6時間英語に触れる環境を作るのは不可能に近いと思うんです。
TOEICでスコアアップ報告をして下さった読者さんの記事を拝読していると、社会人の方が、プライベートで英語の勉強に費やせる時間は、1日に2~3時間くらいなんですよね。
1日2~3時間費やすことができれば、TOEIC 900点(CEFR B2)や英検1級合格(CEFR C1)は可能だと思いますが、準ネイティブレベル(CEFR C2)に到達するのは厳しい気がするんです。
【参考】資格・検定試験CEFRとの対照表
となると必然的に、準ネイティブレベルに到達したいなら、1日5~6時間は英語に触れたほうがいい = 英語を使って仕事したほうが圧倒的に有利だなと。
僕の今の仕事は「ブログを書くこと」になるのですが、英語の勉強法について”日本語で”書いているので、仕事中は僕の英語力は一切伸びないわけです(笑)
学習の量を増やしつつ、質も高める
英語学習の質を高める6つの質問
ここまで、勉強時間の重要性をお伝えしてきましたが、最初にも触れたように、英語学習は、量をこなすだけでなく、質を高めることも重要です。(1) 自分が英語学ぶ理由、最終的に達成したい目的は何か?
(2) その中で最優先したいものは何か?
(3) それを達成するのに最も効果的な手段(TOEIC・英検・英会話など)は何か?
(4) 今の自分のレベルに合ったトレーニング、テキストは何か?
(5) 今の自分にとって最も大きな課題、ぶつかっている壁は何か?
(6) それを解決してくれる勉強法、素材は何か?
例えば、英語初心者の頃、【 ディクテーション 】も【 精読 】もせずに、いい加減に【 シャドウイング 】していた時期が数年ありますが、今からすると効果はかなり低かったなと(笑)
同じ素材で【 暗唱 】や【 瞬間英作文 】などの想起(思い出す)系のトレーニングも並行していれば、もっと成長は早かっただろうと後悔しています。
そして、Huluで映画やドラマを数百時間観ましたが、日本語字幕で普通に視聴しただけなので、リスニング力はほとんど伸びませんでした。
初~中級者が【 ディクテーション 】などの精聴をせず、聞き取れない割合が多い音声を100回聞いたところで、聞き取れるようにはならないんですよね。
また、TOEICスコアが最優先なのであれば、TOEICに特化して勉強したほうが時間対効果は高いですし、英会話力を伸ばしたいなら、ニュース記事を読むよりも、英会話CDを使ったり、TOEICや英検のリスニングパートでトレーニングしたほうがいいです。
そんなわけで、勉強時間はすごく大事ですが、効果的な勉強法、自分の目標に合った勉強法や素材選びも大事で、定期的に自分の勉強法やトレーニングを振り返る時間を持ったほうがいいと考えています(`・ω・´)b
● 真のバイリンガルは努力家だった件
● 英語学習 継続のコツ
【 多聴多読 】
● 英語「超」上級者は例外なく多読していた件
└ 多聴多読の効果 / 注意点
【 リスニング 】
● 脳内ディクテーション
● NHK WORLD TV / 映画・海外ドラマCD本
● ネイティブYouTuber
● ポッドキャスト「Speak UP Radio」
【 リーディング 】
● 英語ニュース&読み物サイト

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